Que c’est beau
凹(オウ)という街への開き方
水と緑に包まれた清澄白河エリアは、美術館や新しいコンセプトのコーヒー専門店が続々と誕生するカルチャーの発信地としての印象が強い一方、街を歩くと密集した住宅と江戸時代から続くお寺が混在する地域であることに気づく。
今回我々が内装を請け負った物件は、南面の道路と北側のお寺に挟まれた築年数不明の地上2階建て鉄骨造の1階(約75㎡)である。
道路側には大口のシャッター、お寺側は木軸フレームと勝手口が残されており、長年倉庫として使用されていたそうだ。
ここでビストロを運営する夫婦からの要望は「この空間のラフさが気に入ったので可能な限り残したい。」というものであった。また、彼らは、清澄に住まう人々が好きで、この街に開業することを決めたとも語っていた。
そこで我々は「空間の一部を街に開く」、さらには「ビストロに集う人々が、街の一部であるような空間体験を目指す」というヴィションを掲げた。
具体的には以下の手段をとった。
1.長年この通りに建つ建築のファサードはシャッター含め手を加えず、景色をそのままに残す。
2.そのファサードから4Mほど奥までを、誰もが入ることのできる曖昧な外部空間として通りに開く。
3.立ち飲みカウンター付きの木製引き戸サッシを設け、人の営みを含めた第2のファサードを作り出す。
4.経年変化した直線的な既存建築に対しワインセラー、キッチンカウンター、トイレなど新規造作はシナベニヤを湾曲させ、風・光・人が流れるように配置する。
一般的に路面店舗にとっての定石は、目立つファサードを通りいっぱいまで表現する。これを凸(トツ)とするならば、この店舗は凹(オウ)という手法で、街の一部であることを試みた。
自身を引いてみることで奥ゆかしい「人の営みというファサード」が作りだす顔もまた、街の魅力になることを期待している。
Data
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Client
Que c’est beau
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Restaurant
Kiyosumi,Tokyo (Japan)
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Completion
2020.6
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Total area
74.90㎡
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Design
Masaki Kato, Yujiro Otaki, Ryoga Osada
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Construction
YANE
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Sound system
WHITELIGHT
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Photo
DAISUKE SHIMA