AGNÈS B. JAPAN Head office

原点を掘り次のステージに登るオフィス

フランス・パリに本社を持つアニエス・ベーの東京本社のリロケーションプロジェクトとして依頼を受けた。
既存のオフィスは床面積の広い同一フロアであったものの、通路により部署ごとが分断されており、物の管理もコミュニケーションも取りにくい課題が見受けられた。在宅勤務スタッフも増えていた最中、クライアントはより環境の良いコンパクトで透明性のある本質的なコミュニケーションの場の創造を求めていた。
そこで我々が導き出したリロケーションの目的は、アニエスのオフィス（ひいてはブランド）の「原点とベクトル」を社内外に意思を持って明確に伝えること、と位置付けた。

アニエス・ベーの歴史を紐解くと、元精肉工場を改修したアトリエからその創造と製作が始まったと聞く。
これこそが原点であり、現在進行形で次のステージに向かうために大切だと考え、エントランス正面に透明性の高いアトリエを作ることを設計の軸に添えた。
このアトリエは見た目重視のパフォーマンスではなく、ここで実際に新しい商品が企画され、テストされ、商品化されるための実験場であると共に、この人の営みこそが共に働く人たちのモチベーションの原点であるということを、語らずに伝える。
アトリエは「原点を掘る」という言葉通り、床（OAフロア）を撤去し、一段掘り下げて周囲から見渡しやすく行き来がしやすい場とし、その横にアトリエと同面積で用途を限定しないオープンスペースを作り出した。
オープンスペースは、アトリエと対照的に床を１段上げ、可動式の家具やアートで彩り、現在とこの先のアニエスを共創する永遠に未完成な場とした。
この2つのスペースを囲むようにカフェ・会議室・執務室を配置し、シームレスでフラットなオフィスが出現した。
このオフィスで生まれるヒト・モノ・コトの営みが有限なオフィスの外に広がり、無限の可能性とともに多くの人々に認知されていくことを願う。