Sendomachi Residence
町にひらく100年の住宅
東側を太平洋に接する、大分県・佐伯市。 その船頭町という町に建つ築90年程の木造住宅をリノベーションしました。施主の家族は町で300年以上に渡り暖簾を掲げる老舗の麹店で、今回の計画地と同じ通りに位置しています。息子である施主が家業のPRだけでなく、町のにぎわいを復活させるため地元の人々と集い、新しい活動をつくっていく拠点となるオフィスを備えた住まいをつくることを決意され、彼のビジョンを実現するための設計が始まりました。
この住宅で最も象徴的な空間となるのは、既存の通り土間をそのまま残した1階の空間です。全面を格子戸とした入り口から足を踏み入れると、土間のオフィススペースが広がります。格子戸を開け放つことで前面道路とフラットにつながる、セミパブリックなスペースとしました。
家族の居住空間の中心となるキッチンとダイニングは通りに向けて設えることで、料理を支度する様子、にぎやかな食事のシーンが土間へ、そして前面道路へとにじみだします。
ダイニングの頭上は吹き抜けとし、施主が惚れ込みこの物件の購入に至った屋根の大梁を見せました。
主寝室と子供部屋を擁する2階は、吹き抜けを囲むように居室を配置しています。
90年の歳月を超え建物を支えてきた構造は、美しいシンボルとして家族が集う様子を見守っています。
積極的に街や通りと関わり、自分たちの生活の一部をコミュニティに開いていく。住宅というプライベートな空間にパブリックの要素が自然に取り込まれ、また発信されていく。そんなビジョンを持った施主と形づくっていく住宅は、私たちにとって大きな意味を持ちます。暮らすことをどのように捉え、場所の文脈とどのようにつながるのか?
施主と共に課題を見つけ、仮説を立て、毎日の暮らしの中で実践していくのです。
本プロジェクトの施主は「住む」と「つながる」を暮らしの軸に選びました。
ある時は通り側に面して設えたキッチンからの美味しそうな匂いに、またある時は土間で行われる集まりのにぎやかさに惹かれ、ふらっと誰かが立ち寄ってくるかもしれません。それこそが地元を愛する施主が実現した光景であり、私たちが思い描く、開かれた住宅の姿です。
Data
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Client
A
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Residence,Gallery/Studio
Saiki, Oita (Japan)
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Completion
2018.4
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Total area
206.00㎡
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Design
Masaki Kato, Yuki Sato
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Photo
Koichiro Fujimoto