Kazakoshi Residence

この家の建主でもあり設計者でもある私は、これまで20年以上、都市を住まいとしてきた。
ひとりで住まう雑居ビル内の狭小ワンルーム。
夫婦で住まうゆとりのワンルーム。家族と仕事仲間で集う職住一体の一戸建て。
ライフスタイルの変化に合わせて、半径1km圏内で点々と中古物件をリノベーションする日常があり、それは仕事の延長線上でもあった。
このままリノベーションによるヤドカリ的都市生活を続ける選択肢もあったが、家族や仕事仲間と話し合い、自然豊かな環境に自宅を建てる機会に巡り合えた。

軽井沢町の中心に位置する計画地は、南面に広がる手つかずの林から吹く風と借景が敷地面積以上の開放感をつくり出していた。
当計画地は東西隣地より1.5mほど高い地盤面と同時に、長方形に区画されたが故に近隣建物と近い距離を余儀なくされる課題を持つ。

自ずと「接道の北」と「借景の南」を結ぶ8間×4間の長方形のプランからスタートすることにした。
プランを立ち上げる際には、東西の既存建築から屋根形状と外壁材を導き出し、以前からここに存在していたような、周囲に溶け込む建築としてスギ板張り切妻屋根の外観デザインを採用した。
接道面である駐車場を有した北側には、新設の樹木を種類多く植樹し、将来は建築のファサードを覆い尽くすことを期待している。

大黒柱の代わりに本棚を主構造とした天高5.5mのリビングには、外部と内部の際に身を委ねる東西南3つの異なる「縁側」的空間を配した。
大きく広がる林につながる床としての「南の縁側」。腰掛けにも使えるエントランスから続くベンチとしての「東の縁側」。家の中心的存在のキッチンバックカウンターに埋め込まれたソファとしての「西の縁側」。この3つの縁側は自己と自然との距離、自己と他者との距離を感じる大切な居場所になるであろう。

Data

  • Client

    K

  • Residence

    Nagano (Japan)

  • Completion

    2021.4

  • Total area

    124.00㎡

  • Design

    Masaki Kato, Aoi Hirose

  • Construction

    SHINKENCHIKU Co., Ltd.

  • Structural design

    オーノJAPAN

  • Landscape design

    YardWorks

  • Lighting design

    ModuleX

  • Photo

    DAISUKE SHIMA