Takasaki Salon Project

JR高崎駅の西側に、南北に流れる烏川。その河川に向かって緩やかに勾配する住宅地の高台に別荘としてひっそりと建つ築40年強の木造建築の再生プロジェクトである。
オーナーは高崎で江戸時代より300年近い歴史をもつ産婦人科医として県内外に広く知られる存在であると同時に、地元高崎のスポーツ、文化、芸術をその陰日向に支えてきた立役者でもある。

時代は流れ令和の今、何を未来に紡いでいくのか。医院に勤めるスタッフをはじめ関係者と語り育む場(ギャラリー&サロン)が必要となってきた。
そこで、この高崎の雄大な景色を一望できる別荘に白羽の矢がたった。

ディレクター加藤奈香の強い意志もあり、新築で作るのではなく、今ある建築に新しい命を吹き込むリノベーションの一択を施主にお願いすることにした。

調べれば、同建築は1970年代にレーモンド設計事務所を卒業された建築家によって建てられたとの事で、その事実も既存建築の再生を後押ししてくれた。

既存建築はアプローチのある東側からは低い屋根を持つ平屋の様相であるが、エントランスを入ると敷地段差を活かした片流れの大きな気積のリビングダイニングと烏川側に広がる庭が印象的であった。

我々はこの建築を現場調査も含め内部解体からスタートした。
これから多くの方がこの場を訪れ、医院と高崎の歴史に想いを馳せ語らうに値する空間を想像した。

既存エントランスのアプローチであった室内段差を基礎ごとやり変え、建築の中心に5Mのアイランドキッチンを配し、この空間が食と共に語らう場である事を伝える事にした。申請無しの増築で許される10平米を利用し、玄関をセットバックしキッチンを回遊するようにアプローチすることで導線を確保した。

屋根裏にあった巨大な倉庫を一部解体し、ダイニングとラウンジに更なる天井高さを生み出した。

ダイニング横に屋根裏まで続くギャラリーを設け、医院の歴史を建築の歴史と重ねる形で表現を試みた。

室内ダイニングからフラットに続く屋外デッキと庭は、四季折々、高崎の季節を肌で感じさせてくれるもう一つのダイニング空間とした。

解体後、これまで隠れていた柱梁の構造材が現れた時、その仕口の複雑さに心を打たれながら、次の50年は
"裏方であったこれらとの共存こそが目指すべき場だ"とも確信した。

歴史を築いていくことは一朝一夕ではなし得ないが、
こうした日々の積み重ねである事を大切にしていきたい。
そう思える素晴らしいプロジェクトであった。

Data

  • Client

    株式会社 舘出張佐藤

  • Residence

    Takasaki, Gunma (Japan)

  • Completion

    2024.01

  • Total area

    225.26㎡

  • Design

    Masaki Kato, Chayo Shinozaki

  • Construction

    KICHI & Associates Inc.

  • Direction

    Naka Kato

  • Gallery Direction/Graphic Design

    Ken Okamoto Design Office

  • Landscape design

    Yard Works

  • Structure design

    soso Okawa Seiji, 加藤構造計画事務所

  • Kitchen

    株式会社田中工藝

  • Lighting plan

    ModuleX

  • Furniture direction

    haluta, FLYMEe

  • Photo

    DAISUKE SHIMA